コモンセンスと感情研究会の活動
1. 目的
本研究会は、人間の発達や問題解決で重要な役割を担う幼児期の根源的なコモンセンス(常識)について、異分野研究者や実務家が互いに学び自由に意見交換できるように、人工知能学会の第二種研究会として開設しました。
当研究会では、当初は子ども中心でしたが、次第に成人のADHDやアスペルガー症候群などの発達障害、いじめ、高齢認知症者の行動・心理症状(BPSD)、介護うつなどの分野横断の社会的問題がクローズアップされてきました。介護現場等では、人間同士の感情的トラブル、高齢者の自己喪失感、認知症の人の行動・心理症状の問題が深刻化しています。その結果、コモンセンス知識と情動研究会では実務家と一緒に、子どもという領域を超えて、人間の(子どもの)根源的コモンセンスを基軸に情動(感情)という切り口で、社会的な問題解決に取り組もうという機運が高まってきました。子どものコモンセンスの発達と高齢者のコモンセンスの喪失は双対関係にあり、年齢とは関係なく、両方とも情動が深く関与しているからです。
今年は1956年にマッカーシー、サイモン、ミンスキー、シャノン他の第一線の情報関連の研究者が人工知能(AI)について議論したダートマス会議が開催されて50年目にあたります。AI研究はコンピュータの進歩とともに、ニューラルネット、知識処理、情報検索などで若い研究者を魅了しながら発展し、最近ではロボットの研究が活発化しています。しかし、人間と柔軟にコミュニケートできる気の利いたロボットやヒューマンインタフェースを実現するためには、人間中心の視点で複雑で膨大なコモンセンス知識を計算機で扱うことが不可欠ですが、その基盤となる根源的コモンセンス知識の研究は手探り状態というのが現状です。
このような観点から「コモンセンス知識と情動」を旗印に、脳科学・言語学・発達心理学・知識処理・音声言語処理・ヒューマンインタフェース・医療・スポーツ・教育等の幅広い関連分野の研究者・実務家が気軽に意見交換できる場を提供する気軽に集うことのできる「場」の形成を目指します。
各分野の第一人者による講演会を主体に開催し、従来型の研究会とは異なり、だれもが気軽に参加し、異分野の先端研究や実践の場について学び、お互いに意見を述べやすい体制づくりを進めます。「そもそもコモンセンス知識とは何か」という議論から出発して問題意識を共有し、さまざまな角度からの率直な議論により、真に学際的なコモンセンス研究を推進したいと考えています。講演会・発表会・意見交換の模様は映像で記録し、Webコンテンツとして共有することで、コミュニティ内での活発な議論を誘発するなども計画しています。
これらの取り組みを通して、研究会参加者の間で「想い」と「知識情報」を共有しながら、「コモンセンス知識と情動研究」の開拓・発展を図ります。自然知能と人工知能の融合研究を活性化することにより、人間の根源的コモンセンス知識を考慮した老年介護、認知症ケア、幼児教育や情報システムの高度化を進め、安心・安全で豊かな社会の実現に少しでも貢献してゆきたいと考えています。
2. 取り扱う範囲
人間の持つ最も根源的な知性の解明とその計算機システムへの応用に正面から取り組むアプローチをとるため、人工知能に関わるおおよそ全ての研究分野をカバーし、また、以下のような分野と特に深く関係します。
- 幼児教育、学習システム、発達生涯、福祉、障害者支援
- 発達心理学、認知科学、認知モデル、行動科学
- 知識表現、学習、常識推論モデル、意図状況理解、感情
- 音声学、言語学、音声言語処理、対話モデル
- マルチモーダル、コンピュータビジョン、コミュニケーション
- 脳科学、神経生理学、運動科学
3. 活動計画
人工知能学会の第二種研究会のメリットを生かし、人工知能学会会員に限らずに広く異分野研究者や実務家との交流を促進し、新しい研究分野を開拓することを念頭に活動を展開します。また、関連分野で活躍中の第一線の講師を招き、講演会中心に研究会を立ち上げます。研究会の講演資料やポジション・ペーパーなど電子化してWebベースの資料とし、フレキシビリティの向上を図り、1年後を目処に冊子にまとめます。また、口頭発表や意見交換の模様を映像として記録し、適宜Web上でコミュニティ内限定で公開する予定です。
初年度は、関連分野の研究者による招待講演を主体とした研究会を3~4回実施。2007年度の宮崎で開催の全国大会ではオーガナイズド・セッションを設ける予定。次年度以降:は、関連分野の研究者による招待講演、及び一般講演を含む研究集会等を開催、公開シンポジウムや国際ワークショップを開催したいと考えています。
4. 研究会運営組織
理工系と文系の研究者、各分野の実務家など産学官の幅広い領域から構成します。
発表された方で、承諾いただけたかたは会員名などをリストに加えさせていただきます。
※但し,HP掲載を希望されない方は配慮いたします。
主査 桐山伸也 (静岡大学学術院情報学領域) 主幹事 石川翔吾 (静岡大学学術院情報学領域) 幹事 佐藤久美子 (玉川大学教職大学院) 幹事 沢井佳子 (チャイルド・ラボ) 顧問 竹林洋一 (静岡大学創造科学技術大学院)
研究会発起人/登録者(敬称略、五十音順、予定者を含む):
今泉敏 (県立広島大学保健福祉学部) 大谷尚史 (静岡大学大学院理工学研究科) 大森隆司 (玉川大学学術研究所) 岡ノ谷一夫 (理化学研究所高次脳機能発達研究グループ) 岡本信司 (科学技術振興機構研究開発戦略センター) 片寄晴弘 (関西学院大学理工学部) 加納政芳 (中京大学生命システム工学部) 川口紗季 (静岡大学大学院情報学研究科) 川崎隆章 (株式会社NASA) 小池康晴 (東京工業大学精密工学研究所) 坂根裕 (デジタルセンセーション株式会社) 佐藤健 (国立情報学研究所) 沢田康次 (東北工業大学情報通信工学科) 角康之 (京都大学 情報学研究科 知能情報学専攻) 千代田健一 (株式会社内田洋行テクニカルデザインセンター) 西本卓也 (東京大学大学院情報理工学系研究科) 林安紀子 (東京学芸大学教育実践支援センター) 秡川友宏 (静岡大学情報学部) 原田憲治 ((財)浜松地域テクノポリス推進機構) 稗方和夫 (東京大学大学院工学研究科) 開一夫 (東京大学総合文化研究科) 福井一恭 (静岡県総合教育センター) 星合厚 (ローランド株式会社技術研究所) 堀内裕晃 (静岡大学情報学部) 間瀬健二 (名古屋大学情報連携基盤センター) 水野拓宏 (有限会社ユーアスク) 峯松信明 (東京大学新領域創成科学研究科) 美濃導彦 (京都大学総合情報メディアセンター) 村浩二 (株式会社内田洋行次世代ソリューション開発センター) 大和淳司 (NTTコミュニケーション科学研究所) 山之口洋 (SF作家) 吉岡秀 (株式会社日本コンピュータ) 渡辺光章 (アルパイン株式会社)