子どもの事故予防のための日常生活センシングとモデリング技術
Sensing and Modeling Everyday Life for Childhood Injury Prevention

西田佳史、本村陽一
(産総研 デジタルヒューマン研究センター 子どもの事故予防工学カウンシル)


【概要】

量子論や宇宙論といった自然科学分野には,大抵の現象をうまく説明し,再現できるような「標準モデル」が存在しているが,日常生活の標準モデルと呼びうるようなものは未だ存在していない.知能メカトロニクス技術が,今後,日常生活というシステムの一部として機能するためには,日常生活に関する知識が計算機から再利用できる形で蓄積されたもの,すなわち,日常生活の計算モデルが,基盤技術として重要である.日常生活のモデルを作るためには,現象を記述するためのセンシング技術と,日常生活の定量化に基づいて計算モデルを構築するためのモデリング技術が不可欠である.近年,ユビキタスセンサ技術を用いた全空間的物理現象センシング技術,インターネット技術を用いた全世界的社会現象センシング技術,また,これらのセンシング技術によって得られた大規模なデータベースに基づいた確率論的モデリング技術が利用可能になっており,我々の日常生活を科学や工学の対象として扱う基盤技術が徐々に整いつつある.本講演では,日常生活の計算モデルを構築するための日常生活のセンシング・データベース・モデリング技術を解説する.さらに,これら要素技術をエビデンスベースドなサービスを媒介として実社会と統合することで、要素技術とサービスの持続的な発展を可能とする技術を解説する.特に,子どもの事故予防工学の観点から,これら要素技術および社会システム化技術を具体的に例示し,新しいパラダイムとしての日常生活系の科学技術とその方法論を展望する.